REPORT
「ベトナム絹絵画家グエン・ファン・チャン 絵画保存修復プロジェクト展 愛を語る人—画家のまなざしをつなぐ人々の物語—」
目的
このたび、三谷文化芸術保護情報発信事業財団では、ベトナムの近代画家グエン・ファン・チャンの絹絵保存修復プロジェクトの第4回展覧会として、『ベトナム絹絵画家グエン・ファン・チャン 絵画保存修復プロジェクト展 愛を語る人—画家のまなざしをつなぐ人々の物語—』展を開催する運びとなりました。
ベトナムの絹絵が消失の危機にさらされているということに、他人事ではないと危機感を持った個々人が、それぞれの思いを胸に、15年という長い時間をかけて作品を蘇らせました。本展は、そのプロジェクトの軌跡と、ベトナム絹絵が、なぜここまで人を惹きつけ、保存に尽力させる作品なのか、というグエン・ファン・チャンという画家の思いを同時に紹介いたします。
時間や、国境を越えて、文化や社会を考え、感じ、画家のその内側にあった信念や情熱を感じていただける空間となるでしょう。さらに、国を越えて始動した保存修復プロジェクトによりよみがえった作品を通して、未来へとつなぐ保存修復活動への理解を深める場になれば幸いです。
内容
本展覧会では、グエン・ファン・チャンの画業と、画家のまなざしが向けられたベトナムの近代という時代を読み解きながら、保存修復に尽力する人々のプロジェクトの軌跡をたどります。また、保存修復活動を綴ったドキュメンタリー映像や修復道具を一堂に紹介します。
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photo by NAKAMURA Takasumi(Creative Position CORE)
会場から本サイトへお寄せいただいた声
- 素晴らしい作品をみることができ、修復に携わった全ての方に感謝します。これからも変わらず作品に愛を注げますように。
- 21世紀美術館で偶然「愛を語る人」の展覧会を見ました。展示後半のドキュメンタリーを見て、かなりの修復がなされていることを知り、前の絹絵に戻って、元の絵の雰囲気やタッチを損なわずに修復がされていることに大変感動、興奮しました。この展覧会のために金沢に来てもいいと思えるくらい、心に残りました。絵画保存修復プロジェクトに賛同いたします。
- ベトナムに関わる仕事をしております。金沢21世紀美術館にて絹絵の展示を見て感動いたしました
関連イベントの様子
◆「愛を語る人」オープニングセレモニー
2023年4月28日(金)18:00-19:00会場:しいのき迎賓館1F カフェ&ブラッスリー ポール・ボキューズ(石川県金沢市広坂2-1-1)
◆クロストーク vol.1 「絵画保存修復プロジェクトから見えてきたもの」
2023年4月29日(土・祝)13:00-14:30岩井 希久子(絵画保存修復家)× 林 寿美(インディペンデント・キュレーター)
会場:シアター21(金沢21世紀美術館 地下1階)
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photo by SHIRATORI Masao
10年以上にわたるグエン・ファン・チャン保存修復プロジェクトの中心人物の一人である岩井希久子氏が、これまで目にしてきたベトナムの事情、文化財のあり方、課題をふまえ、長年仕事を共にしてきたキュレーターであり、西洋近現代美術を通した眼でプロジェクトにも参加されていた林寿美氏と、グエン・ファン・チャンに対する思い、そしてこれからの保存修復の未来について対談しました。
登壇者プロフィール
・岩井希久子
(有)IWAI ART保存修復研究所代表取締役。父親が熊本県立美術館建設準備室長をしていた関係で、絵画修復の仕事と出会う。1980年に渡英し、ロンドンのナショナル・マリタイム・ミュージアムで保存修復技術を学び、1984年に帰国。以後、フリーランスとして、モネ、ゴッホ、ピカソといった名画の保存修復を手がけるほか、現代アート、セル画など多様な表現の保存修復にも挑み、JP・USの特許を取得した「脱酸素密閉額装」など多数の独自の技術を開発している。
・林寿美
インディペンデント・キュレーター。1989年より川村記念美術館(現DIC川村記念美術館)開館準備室で勤務。同館で、ロバート・ライマン、ゲルハルト・リヒター、マーク・ロスコなどの展覧会を企画。2012年に同館を退職後、ヨコハマトリエンナーレ2014および2020、「トラベラー まだ見ぬ地を踏むために」(国立国際美術館)、アート・プロジェクトKOBE 2019: TRANS- ほか、内外の展覧会やプロジェクトに携わる。
◆クロストーク vol.2 「ベトナムのなかのフランス文化 新しい『工藝』の誕生」
2023年4月29日(土・祝)16:00-17:30二村 淳子(白百合女子大学准教授)× 十一代 大樋長左衛門(陶芸家)
会場:シアター21(金沢21世紀美術館 地下1階)
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photo by SHIRATORI Masao
フランスによる植民地化は、ベトナムの「工藝」をどう変化させたのか?どのように変わったのだろうか?そこに日本はどう関わっていたのだろう?白百合女子大学の比較文化研究者である二村淳子准教授と、石川を代表する陶芸家、またベトナムにも関わりグローバルに活躍する大樋長左衛門(年雄)氏が対談し、現代の喫茶や食文化に大きく関係する美術観や工藝史について掘り下げました。
登壇者プロフィール
・二村淳子
博士(学術、東京大学 大学院総合文化研究科)。現在、白百合女子大学文学部准教授。比較文化研究者として、東アジアにおける近代の藝術・美術、フランス語圏文化をテーマにしている。主要著書に、『ベトナム近代美術史──フランス支配下の半世紀』(原書房)、『常玉 SANYU 1895-1966―モンパルナスの華人画家』(亜紀書房)、『クスクスの謎──人と人とを結ぶ粒パスタの魅力』(平凡社)など。
・十一代大樋長左衛門
陶芸家。石川県生まれ。2016 年に十一代大樋長左衛門を襲名。大樋焼の伝統を継承し、陶芸、工芸を中心とした作品発表の他に、現代アーティストとして、インテリアデザインや家具デザイン、中国でのブランドを立ち上げるなど、活動は国内外で多岐にわたる。工芸の概念を拡げるための企画展、公募展などの発案、若手作家の育成にも尽力している。文化庁長官アドバイザリーメンバー、ロチェスター工科大学客員教授など役職多数。2023年、恩賜賞・日本芸術院賞受賞。
◆映画上映「記憶を繋ぐ人々」(2017年)
2023年4月30(日)11:00〜、13:00〜、15:00〜(3回上映)絵画保存修復プロジェクトの記録映画(約75分の作品)
会場:シアター21(金沢21世紀美術館 地下1階)
これまでのプロジェクトをまとめたドキュメンタリー映画の上映会を行いました。
記録映像にはベトナム語字幕が付けられ、国内外に広く配布しています。